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最高裁判所第二小法廷 昭和25年(れ)551号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人牧野嘉作、小池一雄の弁護人石井平雄の上告趣意について。

所論は、原審の事実の誤認量刑の不当を主張するものであって、上告適法の理由とならない。

被告人福本二郎の弁護人鍛冶利一、溝淵春次の上告趣意第一乃至第四点について。

原判決挙示の証拠を綜合すれば、原判決摘示にかかる被告人の犯罪事実を認定することができる。その間所論のような採証法則の違反、若しくは、審理不尽等の違法を認めることはできない。所論は畢竟原審の自由裁量に属する証拠の取捨判断事実の認定を非難するに帰着するのであって、上告の理由として採用することはできない。

被告人福本二郎の弁護人溝淵春次、鍛冶利一、平岡啓道の上告趣意について。

所論竹谷正雄に対する司法警察官の聴取書について、本件記録中所論のような落丁のあることは認めざるを得ない。しかしながら、原審公判調書によれば、右聴取書は同公判において、被告人および弁護人立会の上適法に証拠調が行われたことが明白であり、その際被告人からも、弁護人からも何等異議の申立なくその後原審公判を終結する迄の間において、被告人側から何等異議の申立のなされた形跡のない本件においては右書類は原審がこれを採証した当時においては、存在したものと認めるを相当とする。とすれば、その後においてその書類の一部が紛失したとしても、それが紛失したという一事によって、直ちに所論のように原審の採証を不法ならしめるものということはできない。殊に記録編綴にかかる右竹谷正雄に対する検事の聴取書の記載内容からしても、同人の司法警察官に対する供述の内容は判示のごとく本件犯罪事実に照応する被害顛末の供述であったことを推認し得るのであるから、如上、記録上の瑕疵は未だ以て原判決を破棄すべき事由とするに足らないものと認むべきである。

其余の論旨は、畢竟、原審の専権に属する証拠の取捨、判断並びに事実の認定を非難するに帰するのであって上告適法の理由とすることはできない。

よって、刑訴施行法二条、旧刑訴四四六条に従い全裁判官一致の意見を以て主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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